趣意書
NGO非戦ネット再始動の経緯
2023年4月
2015年の安全保障関連法成立後、2022年12月16日には「安保3文書」(「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」)の改定が国会審議を経ずに閣議決定されました。以降5年間で「敵基地攻撃能力」の保持をはじめ防衛力を抜本的に強化し、防衛予算をGDP比率2%に倍増させるという内容です。
「国家安全保障戦略」では、中国、北朝鮮、ロシアの動きを「戦略的な挑戦」「差し迫った脅威」「強い懸念」と位置づけ、軍備増強こそが抑止力になると説いています。そして、「開発途上国の経済社会開発等を目的としたODAとは別に、同志国の安全保障上の能力・抑止力の向上を目的として、同志国に対して、装備品・物資の提供やインフラの整備等を行う、軍等が裨益者となる新たな協力の枠組みを設ける。これは、総合的な防衛体制の強化のための取組の一つである」ことが明記されました。
さらに、2023年4月5日には、この「国家安全保障戦略」を受けて「政府開発援助(Official Development Assistance: ODA)とは別」の他国軍支援が、「政府安全保障能力強化支援(Official Security Assistance: OSA)」という名称で国家安全保障会議(National Security Council: NSC)で正式決定されました。外務省もOSAは「大半が軍事用途」と認めており、日本のODA政策の拠り所となる「開発協力大綱」に謳われた「非軍事原則」を事実上破棄するものではないかと考えられます。「非軍事原則」に縛られることない軍事援助を実施する枠組みが具体的に制度化されたことを意味する日本の国際協力の大転換です。
このような動きを受けて、私たちNGO非戦ネットは、引き続き、日本を戦争ができる国にしようとする動きに反対していくために、再始動します。
NGO非戦ネット2016~ 趣意書
私たちは、国際協力・交流活動に取り組むNGOや市民の立場から、2015年9月19日に国会で成立した安全保障関連法とこの法律を中心とした日本を戦争ができる国にしようとする動きに反対します。私たちは、戦争が起こるカラクリや、人間としての当たり前の権利を奪われた人々の絶望と反発が「テロ」の温床になっている現実を見つめてきました。世界各地での活動経験から、貧困や飢えから解放され、当たり前の権利を享受できてこそ、平和で安全な社会が導かれると確信しています。
NGOは国境を越えて市民同士が協力し合い、国の利害を超えて貧困、環境、人権、紛争といった地球規模の問題の解決に取り組んできました。また一方で、自然と共生し、独自の文化・価値観のもとで安心して暮らす人々の生活に触れ、「豊かさ」のあり方を共に学びあう交流の場を築いてきました。対立を対話に変える努力を積み重ね、信頼しあえる関係性をつくってこそ、安心して共に生きる社会が築けると考えます。この信念に基底には、全世界の人々の平和的生存権を非軍事的な手段によって達成すると宣言した日本国憲法と9条があるのです。
NGO非戦ネットは国際的な市民社会の連帯を基調とするNGOの立場から、武力で平和は作れないという信念のもと、非戦の思いを市民と政府に届け、市民が広く結集できるネットワークをめざします。そして日本を戦争ができる国にしようとする動きに反対していきます。
附則
2002年7月4日、私たちは9.11事件以降世界を席巻した対テロ戦争と、対テロの名のもとでの市民的な自由の規制に危機感をもったNGO有志が集まり最初の「NGO非戦ネット」を作りました。各種声明、イベント開催、平和デモへの参加、海外の対テロ戦争についての情報発信などを行い2004年には一旦組織を整理し解散しましたが、昨年7月2日日本での安保法制制定の動きを黙って見過ごすことはできないと考え、最初の「NGO非戦ネット」の趣旨を受け継いでNGO非戦ネットを新たに発足させました。2015年9月19日に安全保障関連諸法が国会で成立、2016年3月29日には施行されました。今後は安保法制の運用や憲法改正など、日本を戦争ができる国にしようとする動きがさらに加速していくでしょう。そこで安保法制制定に対する反対に限定せず、広く日本を戦争ができる国にする動きと実際に戦争に参加しようとする動きに反対する運動としてNGO非戦ネットを継続することにしました。