【イベント報告】 南スーダンの現状と自衛隊の駆けつけ警護 ~NGOの支援現場から視る~

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講演するJVC今井高樹(写真右)と聞き手の布施祐仁さん。(写真提供:内田和稔)

 

2016年10月12日、東京の築地本願寺講堂で「NGO非戦ネット公式イベント 南スーダンの現状と自衛隊の駆けつけ警護 ~NGOの支援現場から視る~」を開催いたしました。当初の定員を大幅に上回る約120人が来場。現地のことを知りたい、共に平和について考えたいNGO職員や、市民が参加し、会場は熱気に包まれました。また、多くの報道陣も取材に訪れました。

会場に溢れんばかりの人たちが駆けつけました。(写真提供;内田和稔)
会場に溢れんばかりの人たちが駆けつけました。(写真提供;内田和稔)

メイン講演者はNGO非戦ネット賛同団体の日本国際ボランティアセンター(JVC)スーダン事務所現地代表の今井高樹さん。戦闘激化、治安の悪化により支援活動が難しくなる中、今年9月、今井さんは南スーダン入りし避難民に対して食糧支援などの活動を行ってきました。今年7月の首都ジュバでの戦闘激化以降、自衛隊や政府関係者を除き現地入りした日本人は今井さんのみです。

 

 

 

 

 

写真を見せながらの講演の様子。(写真提供:内田和稔)

聞き手のジャーナリスト、布施祐仁さんは自衛隊派兵関連の取材をこれまで行ってきました。今井さんの話を聞き出しつつ、自身で取材を行い入手してきた自衛隊の内部資料や、国会での動きを紹介。市民に分かりやすいように解説を行いました。

今井さんは現地の治安状況を現地で撮影した写真を紹介しつつ、以下のように話しました。

「南スーダンはでは、内戦が勃発。昨年の8月に和平合意に達し、統一政府ができました。しかし今年7月には首都ジュバを中心に再度内戦状態に突入。現在では戦場は南部に移りつつありますが、250万人もの人々が国内外で避難民になる事態となっています。私が支援を行った首都のジュバはだいぶ平穏を取り戻しつつありますが、首都を一歩出ればひどい状況です。日常的に戦闘行為が行われています。和平協定は崩れ、事実上の内戦状態に突入しています。」

 

また、難民の方々の過酷な状況についても話をしました。

「JVCは首都ジュバ近郊の「グンボ地区」の難民キャンプで食糧支援を実施しました。そこに暮らしている人たちは殆どが女性と子ども。日々の食料もない状況でした。ある母子は、食べるものがなくその辺に生えている野草を食べて飢えをしのいでいました。もともと住んでいた村は政府軍か、反政府軍かも分からない集団に襲撃され、略奪され、もう戻る村もない、と話していました」

 

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今井高樹さん(撮影:内田和稔)

稲田防衛相が南スーダンで現地視察を行い、今後実施される可能性のある「駆けつけ警護」や「宿営地の共同防護」にも言及。

「南スーダン政府は国連のPKOに対してもともと敵対的な態度を取っています。国連の管理する保護施設には、約20万人が暮らしていますが、南スーダン政府はそこに反政府勢力が入り込んでいると主張。南スーダン政府は、そこを守っているPKOは反政府勢力を匿っている、と言っています。PKOの増派自体に対しても反対であると、政府高官は話しています。もちろん、日本の自衛隊も敵性勢力として捉えられ、戦闘に巻き込まれる可能性も十分にあります。そのような状況の中で、南スーダン政府軍は国連の保護施設や、国連の保護施設に逃げ込もうとしている人々に対して攻撃を行っています。もし、自衛隊が国連施設を守ろうとすれば、南スーダン軍と対峙することになります。明らかに「PKO派遣5原則」にある「相手国の同意」をとることは不可能です。わたしのような日本人NGOも警護対象になるのでしょうが、南スーダン政府してまで行うことは現実的でしょうか」

 

 

また、会の冒頭と最後にはNGO非戦ネット呼びかけ人の藤井あや子(WE21ジャパン代表理事)と佐藤真紀(JIM-NET事務局長)がスピーチを行いました。藤井さんは市民の立場から近隣諸国と平和について話し合うことの大切さについて話し、佐藤さんは南スーダンのことを政治の視点からだけでなく、現地の人々に届く支援を継続的に行っていくことの大切さを訴えました。

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藤井あや子さん(WE21ジャパン代表理事) 撮影:内田和稔
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佐藤真紀(JIM-NET) 撮影:内田和稔

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NGO非戦ネットは今後とも、海外で現場を持つ立場、人権、市民の立場から非戦の声をあげつづけます。

今回の講演会の映像はNGO非戦ネットの賛同者に限定的に公開する予定です。賛同はトップページから行うことができます。