【声明】「南スーダン派遣自衛隊の撤退を受けての声明」2017/4/21

プレゼンテーション1

 

2017年4月21日、国際協力に関わるNGO(非政府組織)77団体が参加する「NGO非戦ネット」は、南スーダンに派遣されている自衛隊の撤退に関して、以下の声明を公表しましたので、ご報告いたします。

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南スーダン派遣自衛隊の撤退を受けての声明

2017年4 月21 日
NGO非戦ネット

政府は、南スーダンに派遣している自衛隊を今月19日から段階的に撤退させることを決定した。私たちは紛争状況にある南スーダンにおいて自衛隊の駐留と安保法制の新任務付与がPKO法と憲法に違反するためこの派遣に一貫して反対してきた。

今回の自衛隊の南スーダン派遣にあたり、政府は国際貢献を強調してきたが、現実には以下のような多くの問題が露呈した。したがって、自衛隊の撤退をもって問題が解決するものではなく、安保法制の運用に関して今後に向けて教訓を残すために南スーダンPKOへの自衛隊派遣の検証を行う必要があると考える。

 

まず、昨年末、国連安全保障理事会での対南スーダン武器禁輸決議案で、日本が賛成しなかった理由の一つとして自衛隊の安全確保のためであったことが、米国のサマンサ・パワー国連大使(当時)から指摘されたことである。

次に、南スーダン各地で、同国政府軍と反政府勢力が戦闘を続けているにもかかわらず、国会答弁で、稲田朋美防衛大臣が「南スーダンに紛争当事者はいない」(2017年2月20日 衆院予算委員会)と発言したことである。また昨年7月の戦闘の模様を詳しく記録した自衛隊南スーダン駐留部隊の日報について、政府は国会答弁において破棄したとしながら、自衛隊新部隊の派遣後にその存在を認めたことである。これは、戦闘が発生したこと、紛争当事者が存在したこと、停戦合意が崩壊したことを認めれば、PKO5原則に抵触してしまうからだと考えざるを得ない。南スーダンの和平において、日本はサルバ・キール大領領率いる南スーダン政府のみ後押ししてきたことも、上記のような日本政府のスタンスが関係していると思われる。

さらには、350万人もの難民・国内避難民が発生し、国民の半数が食料不足に直面している状況に対応して支援を行おうとする日本のNGOに対して、政府は日本人スタッフを同国から退去させるととともに、渡航にすら厳しい規制を課してきたことも重大な問題である。

日本政府は、自衛隊の派遣という政治目的先にありきでことを進めたため、南スーダン現地の実情を正確に受け止められず、南スーダン和平のため自衛隊の派遣以外の方法で日本がなしうる貢献を逃した、と断じざるを得ない。ところが自衛隊の南スーダンからの撤退を機に、こうした問題があいまいになり、さらに、今や世界でも最も深刻な人道危機の一つである南スーダンの状況に対し、日本政府当局者の関心が薄れることが危惧される。人道危機に対する支援において、受益者たる現地の人々の生命や安全よりも、政府の政策や思惑が優先されることはあってはならないと、私達NGO活動に従事する者として考える。よって、自衛隊南スーダン撤退を機に、私たちは以下、提言する。

  1. 自衛隊派遣を最優先し、南スーダン情勢をめぐる日本政府の見解に混乱が生じていたことを認め、検証すること。
  2. 今後、紛争地への日本としての人道支援において、自衛隊派遣ありきではなく、何が本当に求められ、最も効果的な貢献であるかを、慎重に検討すること。
  3. 南スーダンでの「国民対話」に、反大統領派も参加させるよう、また対話は南スーダン国内ではなく、第三国で行うことを、日本政府として、南スーダン政府に求めるなど、真の和平の進展のために力をつくすこと。
  4. 南スーダンの国民の約3分の1が国内外での避難生活を余儀なくされ、国民の約半数が食糧危機に苦しむ状況を鑑み、日本政府は国連やNGOと連携して、必要な支援を積極的に行うこと。

以上